2021/12/15 10:00
おくすり Q&A/薬の保管方法は?
ご家庭での薬の保管方法、どのようにされていますか?
薬を飲むのを忘れないように、
いろんな工夫をしていただいていることと存じます。
家庭内での薬の保管、
実は、落とし穴が潜んでいます!
大切な薬、毒にしないために、気をつけていただきたいことをご紹介します。
赤ちゃん、子供さんの、誤飲事故に注意!
0歳児〜2歳児が、家庭内で遭遇する事故の3大原因
「転落」「転倒」「誤飲・誤嚥」
誤飲してしまったものとしては、
0歳児・1歳児では、「電池」「タバコ用品」
2歳児では、「医薬品」「電池」
が原因の上位でした。
どれも身の回りにあるものですよね?
特に、医薬品は、飲み忘れないようにと、近くに置いておくことも多いと思いますが、カラフルな色合いが目をひくものであったり、ご家族の方が飲む・使うところを見ていて興味を持ったり、など、赤ちゃんにとって、魅力的なものに見えるんでしょう。
ここで、消費者庁が集計した、子供の医薬品誤飲事故の報告を見てみましょう。
これは、実際に事故が発生したときの状況です。
①では、1歳7ヶ月の子供さんが戸棚の中から医薬品を取り出していました。状況から、座椅子の上に椅子を自分で重ねて、その上に等、棚を開けて、取り出していたようでした。
④では、2歳10ヶ月の子供さんが、キッチンの奥の方においていた医薬品をとっていました。
このように、実際に発生した事例を見ると、予想もしないところに、手が届いていることがわかります。
子供さんは、これが医薬品で、間違って飲んでしまうと、自分には作用が強すぎる、などわかりませんから、ご家族の方が大切そうに使っているあれ、なんだろう?とりたい!と、興味心に火がついて、一生懸命手を伸ばしていたんだと思います。
子供さんの好奇心・行動力は、大人の想像を超えています。
もう一つ、どのくらいの高さに手が届いていたのか、という調査結果を見てみましょう。
0歳児でも、そこにある足場を使っていたり、足場を持ってきて、よじ登っている例もありました。最高到達地点は100cm!だったそうです。
また、1歳児になると、さらに活動範囲も広がります。足場をつかうなどして、なんと、210 cm の高さのところにある医薬品をとっていた事例もあったそうです。
このように、思わぬところまで、手が届いていることがわかります。
医薬品を保管するときには、次の事項に注意しましょう
◯子どもの手の届かない、見えないところに保管しましょう
◯服用後はそのまま放置せず、元の安全な場所に片付けましょう
◯シロップ剤を冷蔵庫に保管する際には、ドアポケットなどにジュースなどと一緒に並べて保管するのはやめましょう
また、ご家族の方の薬を保管する場合、子供さんにとって魅力的なお菓子の空き箱に保管することは避けた方が良いでしょう。(保管する場合は、お菓子の名前を隠す、などの工夫をお願いします)
ご家族の方が、ご自身の薬を飲む場合は、子供さんから見えないところで、お願いします。
海外の事例ですが、ご家族の方ががん疼痛のためにつかっていた貼り薬を、子供さんがすり傷に使ってしまい、死亡した事故も発生しています。
薬の中でも、特に注意が必要な薬(ハイリスク薬)には、ご家庭での管理に注意が必要です。(麻薬性鎮痛薬、抗悪性腫瘍薬、精神・神経に作用する薬、抗不整脈薬など)
参考資料)
[1]独立行政法人国民生活センター:「発達をみながら注意したい0・1・2歳児の事故 ー医療機関ネットワーク情報からー」、平成28年1月14日.
[2]消費者庁:「消費者安全法第23条第1項の規定に基づく事故等原因調査報告書 ー子供による医薬品誤飲事故ー」、平成27年12月18日.
イラスト:イラスト AC から、フタバさんのイラストを使用させてもらいました。
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参考)正しい保管方法について、こちらで説明しました。よろしければ、ご覧ください。
2021.12.28 おくすりQ&A/家庭内での薬の保管方法
2021/12/14 09:00
【薬と飲み物の相互作用】ミネラルウォーターで飲んではダメな薬?【特別編】
これまで、薬と相互作用がある代表的な薬を紹介してきました。
薬の中には、特に影響を受けやすいものがありますので、ご紹介します。
〇ビスホスホネート製剤
これは、骨粗鬆症の方などで、使われる薬です。
ヒトの体内では、骨は常につくりかえられています。
古くなった骨は破骨細胞で壊され、壊れた部分を骨芽細胞が修復することで、新しく作り変えられています。
骨粗鬆症は、このバランスが崩れ、骨量が少なくなっている状態です。
骨粗鬆症があると、転ぶなどのちょっとしたことで骨折しやすくなります。
骨粗鬆症の予防のために、運動(運動負荷により骨生成が促進される)やカルシウム・ビタミンD・タンパク質を食べるように食事の工夫が推奨されます。
それでも不十分な部分を補うために、治療薬が使われます。
骨粗鬆症の治療薬の一つに、「ビスホスホネート製剤」があります。類薬をまとめて、「ビスホスホネート製剤」と総称されます。
これは破骨細胞の働きを抑制することで、骨量の減少を増加させる効果があります。
これにより、転倒による骨折を予防し、日常生活を過ごしやすくするために使われます。
とても大切な薬ではあるのですが、薬の飲み方にとても注意が必要です。
①消化管から吸収されにくい
この薬は、消化管から非常に吸収されにくいという特徴があります。服用した薬の数%しか吸収されません。
(そういうと本当に効くのと思われるかもしれませんが、骨量を増加させる、将来に寝たきりになるリスクを下げるために、とても大切な薬です。)
そのため、薬をきちんと吸収させ、効果を得るために、薬の吸収を邪魔するものを極力少なくする必要があります。
<飲み方の工夫>
- 起床後すぐに服用する
- コップ一杯の水道水で服用する
- 服用後30分は、飲食を避ける
そこで、上記のような飲み方の工夫が必要になります。
「起床後」服用には、消化管の中が空っぽの状態のときに、薬を飲んで欲しいという意味があります。
「服用後30分は飲食を避ける」には、薬の他に、何かの食品があると、それとくっついてしまい、薬が吸収されなくなるので、それを防ぐ、という意味があります。
何かの食品というものには、「ミネラルウォーター」も含まれます。
ミネラルウォーターの多くは、ミネラル分を多く含み、硬度が高いものがあります。
「ミネラル」とは、無機質ともいわれ、カルシウムなど、4大栄養素を助ける働きをするものです。
ビスホスホネート製剤は、これらともくっついてしまうため、薬が吸収されなくなり、薬の効果が減少してしまいます。
そのため、ミネラルウォーターで飲んではいけません。
また、服薬を助けるための服薬補助ゼリーなどをお使いの方もいらっしゃると思います。
これも、ミネラル分などを含むため、服薬補助ゼリーを使って、ビスホスホネート製剤を飲んではいけません。
ただし、薬自体がゼリー状の薬も開発されていますので、服薬しずらいなど、お困りの方はご相談ください。
②消化管粘膜に炎症を起こす可能性がある
この薬は、粘膜に炎症を起こす特徴もある薬です。
そのため、口の中や食道の途中に引っかからないように、服薬後30分は、横にならずに上体を起こしておくように、お願いします。
<飲み方の工夫>
- 服用後30分は、横にならない
誤解されやすい点がありますので注意をお願いします。
横にならないことが大切です。
中には、ずっと立ったままでいないといけない、と誤解されることがあります。横に寝そべらなければ、座っていて構いません。背もたれに寄りかかっていただいて結構です。
じっとしておかないといけない、と誤解されることがあります。寝そべらなければ、普段通りに動いていただいて結構です。
これまでの記事も、参考になさってください。
2021.12.07 【薬の使い方】薬の正しい飲み方と、そのわけ
2021.12.08 【薬の使い方】飲み合わせが悪い薬がある飲料は?
2021/12/13 10:00
【薬と飲み物の相互作用】青汁
これまでに、医薬品と食品(飲料)の相互作用について、お伝えしてきました。
今回、お伝えするのは、青汁です。
青汁というと、野菜不足を補うために、健康を心がけて飲んでいる方もいらっしゃると思います。
ただし、ひとつの薬については、その薬の効果を邪魔してしまうため、注意が必要です。
〇青汁
青汁というと、ケールが良く使われます。ケールは、キャベツやレタスの原種といわれ、栄養素のバランスが良いことからも、青汁の原料に使われます。
他にも、青汁の原料としては、他にも、青麦若葉、明日葉、桑の葉などが使われます。
総じて、特長としては、ジュースにすることで、たくさんの量を簡単に摂取することができます。
その反面、一度に「たくさんの量」をとるため、相互作用が起きてしまう、という注意点があります。
・ワルファリン
ワルファリンは、血液を固まりにくくして、血栓(血液の塊)をできにくくし、血管が詰まらないようにするための治療薬として、用いられています。
その作用メカニズムは、血液を固まらせるために、「血液凝固因子」の合成を邪魔することで発揮されます。
血液凝固因子のうち、いくつかの種類は、ビタミンKの働きによって、活性化されます。
つまり、血液が固まるためには、ビタミンKが必要です。
ワルファリンは、ビタミンKの働きを邪魔することで、血液を固まりにくくしています。
ワルファリンの効き目には個人差や変動があるため、常に効果を確認しながら使われています。
ビタミンKは、食事から摂取され、また、腸内細菌によって合成されています。
食事からのビタミンKの摂取量が多くなると、ワルファリンの効果が減少します。
そのため、ワルファリンを飲んでいるときは、
①ビタミンK含有量の多い食品をとらないこと、
②摂取量が大きく変動しないこと、が大切です。
食品の中でも、納豆は特にビタミンKの含有量が多く、さらに、ビタミンK合成酵素も持っています。
納豆を食べると、ワルファリンの効果がなくなるため、ワルファリンを飲んでいるときは、納豆を食べてはいけません。
ワルファリンは、効果が長く続く薬ですので、食べる時間をずらしたとしても、影響します。絶対に、食べないでください。
他にも、緑色の濃い野菜は、比較的ビタミンKの含有量が多いです。
しかし、健康維持のためには、食べないわけにはいきません。
そこで、ビタミンKの摂取量の変動幅を小さくするために、「小鉢一杯」くらいを食べましょう、と言われます。
しかし、青汁だと、ジュースとしてたくさんの量を摂取してしまうため、ワルファリンの効き目を低下させてしまうので、飲まないようにお願いします。
ワルファリンは、古くから使われている大切な薬ですが、相互作用などのため、適切に使うことが大切です。
この他にも、いろいろと説明を受けていらっしゃると思います。
疑問点は、尋ねていただき、納得して治療を受けられるように、お手伝いしたいと思います。
これまでの記事も、参考になさってください。
2021.12.07 【薬の使い方】薬の正しい飲み方と、そのわけ
2021.12.08 【薬の使い方】飲み合わせが悪い薬がある飲料は?
2021.12.09 【薬と飲み物の相互作用】グレープフルーツ
2021.12.13 【薬と飲み物の相互作用】ミネラルウォーターで飲んではダメな薬?【特別編】
2021/12/11 09:00
【薬と飲み物の相互作用】炭酸飲料
薬と食品の相互作用の仕組みについて、引き続きお伝えします。
◯炭酸飲料
炭酸飲料は、「酸性」の飲み物です。
液体の酸性やアルカリ性という特徴を示す尺度に、pH があります。
pH が変化すると、物体が液体に溶けるときの「溶けやすさ」に影響を及ぼすことがあります。
炭酸飲料を飲んだ後は、口の中が酸性に近づくため、虫歯ができやすい環境になります。(だからこそ、歯磨きが大切です)
また、炭酸飲料を飲んだ後は、胃や腸の中も普段よりも酸性側に近づくことになります。
そのため、pH が変わると溶けやすさが大きく変わりやすい薬は影響を大きく受けることになります。
薬によって、pH の変化によって、溶けやすくなるもの、溶けにくくなるものがあります。
その結果、薬の効き目が強くなったり、弱くなったり、影響をうけてしまいます。
また、炭酸飲料は胃酸の分泌も活性化させると言われています。
そのため、胃の治療中の方は、薬の効果が得にくいという影響が出る可能性もあります。
これまでの記事も、参考になさってください。
2021.12.07 【薬の使い方】薬の正しい飲み方と、そのわけ
2021.12.08 【薬の使い方】飲み合わせが悪い薬がある飲料は?
2021.12.09 【薬と飲み物の相互作用】グレープフルーツ
2021.12.13 【薬と飲み物の相互作用】ミネラルウォーターで飲んではダメな薬?【特別編】
2021/12/10 09:00
【薬と飲み物の相互作用】アルコール
食物や飲料には薬といわゆる「飲み合わせ」が悪いものがあります。
このことを、薬と食品とが「相互作用」をする、といいます。
薬と相互作用することが知られているのは、一部の食品ですが、中には重大な影響がある場合もあるので、注意が必要です。
◯アルコール
アルコールが病気に影響する場合と、薬の作用に影響する場合と、両方の可能性があります。
<病気に影響する場合>
アルコールを飲むと「酔う」のですが、これは、アルコールの影響で、中枢神経系(脳を含む)が抑制された状態になっているためです。
他にも、全身にいろんな作用を引き起こします。
例えば、「食前酒」を飲むのは、食事をする前に、消化を助けるように、胃酸分泌を活性化させるという意味もあるように、アルコールは胃酸分泌にも影響します。
また、アルコールは血管を拡張させます。これは、『お酒を飲むと鼻が詰まる』という方もいらっしゃると思いますので、イメージができるのではないでしょうか。
・胃が悪い方
前述のように、アルコールは胃酸分泌を刺激します。
そのため、胃酸のせいで胃が荒れている場合、アルコールを飲むと、治療薬の効果が期待できない可能性があります。
・花粉症の方等
アルコールを飲むと、血管が拡がるので、鼻がつまります(健常な方であっても)。
そのため、花粉症をはじめとするアレルギー性鼻炎があるかたや、鼻症状がある方は、アルコールのせいで、症状がひどくなる可能性もあります。
<薬の作用に影響する場合>
・睡眠薬・中枢神経系に作用する薬
薬の中には、中枢神経系を適度に抑える薬があります。
例えば、睡眠を助ける薬があります。
これは、適度に抑えることで、眠りを誘う効果があります。
そのため、これらの薬をアルコールと一緒に飲むと、薬の効果が強く出過ぎてしまい、予期せぬ効果が出る可能性があります。
(もちろん、アルコールを、睡眠薬代わりに寝酒として飲む、という飲み方はお勧めしません。)
アルコールの効果が切れた頃合いで、きちんと処方された睡眠薬をお飲みになられると安心です。
また、「花粉症」の薬を飲むときに、お酒を飲まないように、と説明を受けた方もいらっしゃるかもしれません。
花粉症の薬のように、鼻水を止める作用がある薬の中には、飲むと眠くなる場合があります。
これも、中枢神経系を抑制させる効果もあるためです。
ただでさえ、薬を飲むと眠くなりやすいという方は、アルコールと一緒に飲むと、過剰に抑制されてしまう可能性がありますので、控えておいた方がよいと思います。
また、花粉症の方は、前述の通り、お酒でも鼻づまりが起こることがあります。薬との相互作用というよりも、お酒のせいで、ますます、鼻症状がつらくなる可能性の方も心配ですので、「ほどほどに」控えることをおすすめします。
・抗菌薬の一つ
抗菌薬の中には、アルコールと一緒に飲むと、「悪酔い」の状態になって、気分が悪くなる薬があります。
アルコールが分解されると、「アセトアルデヒド」という物質に変換されます。この物質が、「酔い」の原因です。抗菌薬の一つには、このアセトアルデヒドの分解を邪魔(阻害)するので、「悪酔い状態」になってしまいます。
この薬を飲む間は、禁酒が必要です。
・風邪薬
風邪薬には、アセトアミノフェンという物質を含むものがあります(市販薬を含め)。
これは痛み止めや熱冷ましの目的で、非常によく使われている薬です。
ただし、アルコール大量に常用しているような方の場合、アセトアミノフェンの代謝に影響した結果、肝障害を引き起こす可能性があります。
というと、ほどほどのお酒なら大丈夫?と思われるかもしれませんが、
ただでさえ、アルコールは肝臓に負担をしいるので、風邪を引いたときは、お酒を控えて、風邪を治すことを優先されることをおすすめします。
お酒は百薬の長、などという言い方をされます。
(現在のご時世では難しいですが)お酒の席でのコミュニケーションが仕事を助けたり、などということも、もちろんあります。
このように、もちろん、お酒に良い面もあることは理解しています。
ただし、薬を飲んでいる場合、アルコールが薬の作用に影響を及ぼし、予期せぬ事態を引き起こす可能性もあります。
お酒とは上手に付き合っていただいたうえで、
薬を飲むときには、お酒を飲んでもよいか、投薬を受けるときに確認しましょう。
これまでの記事も、参考になさってください。
2021.12.07 【薬の使い方】薬の正しい飲み方と、そのわけ
2021.12.08 【薬の使い方】飲み合わせが悪い薬がある飲料は?